まりん書房の最初の本「がんと生き、母になる 死産を受け止めて」は、がんサバイバーの私(村上睦美)の闘病記です。がんとの闘いと闘病後に授かった双子の一人の出産ともう一人の死産、がんの再発・再々発の後に様々な葛藤を経て第二子を産むに至るまでを記しています。
出発点は、娘にこの本を残したいという強い思いでした。書き始めたのは2006年4月、国立がん研究センター中央病院に入院していたときです。本来なら双子で私が死んでもお互い支え合って生きていけたはずなのに、その弟を自身の出生のときに失ってしまった娘。「娘に何か残したい。残せるものは何か」と考え、闘病記を書くことを思い付きました。
当時の思いを「がんと生き、母になる」のあとがきに記していますので、一部を抜粋します。
「病気の連鎖から逃れられず、医師の見立ても良くなく、『私は長くないな』と実感する中、娘が成長し母親の助言を必要とするときには私はもうこの世にいないと思うようになりました。娘が私と話をしたいと思ったとき、この闘病記を手に取ってページをめくり、私はいつも娘の側にいると感じてほしいと願いました。これを呼んで私を反面教師にし、もっとしなやかに健やかに生きてほしいと願いました。そのような思いから、この闘病記を完成させることが、私の大きな目標となっていきました。
ようやく書き終えることができたのは、病気が落ち着き、息子が幼稚園に入園して、少し時間に余裕ができたころです。あとがきを書き、原稿をプリントアウトし、最初のページに直筆で娘へのメッセージを記し、ミッフィーの柄のついたファイルに収めました。それを改めて見たとき、『私が発病したとき、何冊もの闘病記を参考にさせてもらったように、私の闘病記もどなたかの参考にしていただけるのではないか』という気持ちが頭をよぎりました」